ドレミファソラシドだけで曲を書いてみる(オーケストレーション編)
今回の前回の記事https://taka-musictheory.hatenablog.jp/entry/2020/03/22/200226で紹介した筆者のオリジナル曲をオーケストレーションの視点から解説したいと思います。←今回は理論の知識入りません!
その筆者のオリジナル曲がこれ↓
<早速、アレンジを始めようや>
①楽器構成を決める
まず、使用する楽器を決めましょう。使う楽器は音楽ジャンルによって様々。例えば・・・
クラシック→オーケストラ、弦楽五重奏、ピアノ曲など
ジャズ→ビッグバンド、ラージアンサンブル、スモールアンサンブル
ポップス→ボーカル、キーボード、ギター、ベース、ドラム
今回の記事で「オーケストラ用の曲を書く」と決めていましたから、自動的にオーケストラの楽器構成で決まりです。
②横(メロディー)
どの楽器に担当させる?
楽器それぞれ音色、個性が違うので、使う楽器によって全然違う印象になります。
これはどのセリフをどの俳優言わせるか、で全然印象(演技)が違うようなもの。
例えば「Death Note」は何回かリメイクされたが、藤原竜也さんが「計画通り・・・!」って言うのと、窪田正孝さんが「計画通り・・・!(めちゃくちゃ悪そうな笑み)」って言うのと全然印象が違うのと同じです。
③縦(和音)
どの楽器にどの音をあてる?
基本的に息を使う楽器は1つの音しか出ないので、ひとつひとつの楽器に音をあてて、和音を鳴らす。←みんなでハーモニーを作ろうね的な感じ。
今回は②に焦点を当て、解説していきたい。
それでは今回の登場人物(楽器)を紹介しよう。←ざっくりと、テキトーに。
<木管楽器>
フルート・・・小鳥のさえずりのような速いフレーズが得意。
オーボエ・・・鼻をかけたような滑稽な音色がする。今回のアレンジで大活躍。
イングリッシュホーン・・・オーボエと似てる。オーボエに優しい音色を付け足した感
じ。←正直、違いがよくわからない。
クラリネット・・・森!って感じの音。
バスーン・・・面白おかしい音色がする。
<金管楽器>
ホルン・・・暖かみを持つ、遠くまで届くような音を出す。今回のアレンジでちょこち
ょこ顔を出す。
トランペット・・・金管楽器の花形。ファンファーレでよく使われる。「天空の城ラピ
ュタ」で登場するパズーの演奏で有名。
トロンボーン・・・暖かく、丸みのある音色を持つ。サポート役でもソロ役でも大活躍
できる。
<打楽器>
ティンパニ・・・曲に迫力を与える。打楽器なのに実はドレミが出せる。
シンバル・・・盛り上げ役。
トライアングル・・・チンチロリンと音がする。
ウィンドチャイム・・・長さの違う金属棒を横に並べた楽器。小学校の音楽会でもよく
使われるので、読者もご存知のはず。
<鍵盤楽器>
チェレスタ・・・ピアノの友達。キラキラした、幻想時な音を出す。
<弦楽器>
バイオリン・・・オーケストラの主役。音域が広く、美しい音色を持つ最強と言っても
いい楽器。
ヴィオラ・・・バイオリンより大きいので、バイオリンよりも太く、男性的な音色を持
つ。
チェロ・・・あまり目立たないが、音域が広いのでサポートもメロディも担当できるの
で、意外と柔軟にこなせる楽器。
コントラバス・・・弦楽器の低音担当。見た目の割に、持ってみると意外と軽い。
<セクションB>
まずはメロディーをどの楽器にさせるか?
・・・。ヴァイオリンにしよう。無難ですね。
コード、つまり、伴奏担当はヴィオラ、チェロ、コントラバス、オーボエ、イングリッシュホーン、クラリネット、バスーンです。
<セクションC>
このブログで何度か述べたように、同じものが2回続く時は何かを変えましょう。←コピペダメ。ゼッタイ。
!アレンジポイント!
①トランペット、トロンボーンを入れて、曲を華やかにし、ティンパニで迫力を与え
ます。コントラバスーン、チェロ、コントラバスの低音楽器がティンパニーと同じリ
ズムでサポートします。
②ヴァイオリンを1オクターブ上げ、さらに、メロディーにヴィオラを召喚!
ヴィオラなし
ヴィオラあり
ヴィオラもメロディーを担当させることによって、パワーが5000ほど上がって、力強くなりました。
③伴奏パターンを変更!
先ほどのBセクションでは8分音符の伴奏でした。それをCセクションでは3連符に変更です。木管楽器が担当しています。個々の楽器が1フレーズ全部を演奏するのは大変なので(息つぎの関係で)、ひとつのフレーズを2つに分けて、演奏させます。ここでは「クラリネット、イングリッシュホルン+オーボエ、フルート」です。
④ホルンで暖かみを与える
ホルンあり
ホルンなし
*わかりにくい時は音量を上げたり、イヤホンを使うなど、音響環境を変えてみてくだ
さい。
ホルンが無いバージョンだと、少し物足りないような感じがしませんか?
この場面では、ホルンは全音符を「ぽーーー。」と吹いているだけですが、アレンジに暖かみが加えられた印象が筆者はします。
ここでのホルンは料理で言う「隠し味」のような役割を持ちます。ちょっとの違いですが、入ってるいるのと入っていないので、全然味が違う・・・そんな感じです。
上図の赤四角内を見てください。今まで各々の楽器が違う動きをしていました。ここでは全ての楽器がメロディーに合わせて同じ動きをしています。
この2小節前から聴いて、比べてみましょう。
それまで違う動きをしていた楽器達がいきなり同じ動きをすると、ちょっとびっくりするというか、インパクトあって、そこに注意が向けられますよね。
筆者は音楽と漫才は似たような点があると感じます。この場合、例えば、オードリーさんの・・・
春日さん「お前それ本気で言ってるのか?」
若林さん「本気で思ってたらこんな何年も漫才やってないだろ」
春日さん&若林さん「・・・デへへへへへ!」
これまでボケとツッコミの会話だったのに、いきなり二人でシンクロすると、新鮮というか、インパクトがあり、この場合笑いが生まれます。上の場合、筆者はそれと似たような現象だと思っています。
次に青四角を見てください。休符をぶち込んで、曲が止まったような印象を与えました。
たった1小節前まで全員で演奏していたのに、いきなりほとんどの楽器が消えます。これによって、またインパクトのある印象が得られます。先の「オードリーテクニック」と「休符ぶち込むテクニック」を連続して使う、少し攻撃的なアレンジです。
<セクションD>
場面が変わるので、ここで今までの雰囲気をガラッと変えたいと思いました。そこで幻想的なアレンジを作るべく、メロディーをオーボエに任せ、ヴァイオリンにサポート側に回ってもらいました。
緑丸と緑矢印を見てください。 ヴァイオリンがオーボエのメロディーをサポートしながらコードの構成音を奏でています。
音楽はすべて「メロディ+伴奏」で成り立っているのでしょうか?いいえ、「メロディー+メロディー」もあり得ます。
前回の記事https://taka-musictheory.hatenablog.jp/entry/2020/03/22/200226でメロディーにあえてスペースを作ったことを述べました。このスペースにもう一つのメロディーをぶち込みます。
あえてスペースを作ることで、「もう一つのメロディー」が入れる余裕が生まれます。メインのメロディー(ここではオーボエ)以外の、この「もう一つのメロディー」を対旋律(counterpoint または counterline)と言います。対旋律を入れることによって、音楽に会話のようなものが生まれました。
さて、曲の真ん中に幻想的でロマンチックな場面を入れる例を他にもあります。
上図はディズニー映画「美女と野獣」より「朝の風景」の抜粋です。(楽譜はエマ・ワトソン出演、実写版を参考)
最初は、主人公ベルが町の人々と会話する、元気で楽しいシーンですが、真ん中にロマンチックで少女的な雰囲気をぶち込んで、対照的な構成を作ります。
このような手法はゲーム音楽にも見られます。
上の楽譜は2001年に発売されたゲームキューブ用対戦型ゲーム、大乱闘スマッシュブラザーズDXのオープニングです。勇ましいイントロで始まり、真ん中の部分で幻想的なシーンに変わります。
オーボエの出番は終わると、すぐさまヴァイオリンに主役を交代します。
ここではより幻想的な印象を作るために、チェレスタ、ウィンドチャイム、トライアングルを使いました。チェレスタとヴァイオリンを組み合わせて、メロディーの音色が作るのがコツです。それでは、チェレスタのあり・なしヴァージョンを聞いてみましょう。
チェレスタあり
チェレスタなし
やはり、筆者の印象では「チェレスタなし」だと少し寂しい感じがします。「チェレスタあり」の方が幻想感が少し増します。
どちらにしろ、むしろ、ここで重要なのは「楽器の組み合わせ方」です。チェレスタとヴァイオリンがユニゾン・・・云々、という話ではなく、「チェレスタとヴァイオリンで一つの音色を作っている」という考え方に注目していただきたい。
この楽器の”混ぜ方”によって、サウンドカラーが違ってきます。別に必ずしもチェレスタでなくとも良いのです。ハープでも、尺八でも、女性ヴォーカルの声でも良いのです。チェレスタを選んだのは、あくまで作曲者が「チェレスタがいいな」と思っただけの話です。
楽器の”混ぜ方”の可能性は膨大ですから、ここに作曲者・編曲者の個性が表れます。
<セクションE>
場面変わって、次はホルンにメロディーを託しました。4本のホルンのうち、2本がメロディー、残りの2本がコードを担当しています。
場面が変わったので伴奏のパターンも変えました。
ストリングス、クラリネット、イングリッシュホーンが小刻みに8分音符を演奏しています。軽さは出ますが、筆者はこれはあまり最善ではないな、と感じています。もっといいパターンがあるはずですが・・・筆者の創造力の枯渇です。
<セクションF>
最後は全員で大合唱です。
最後は盛り上がりたいので、すべての楽器を使いたいところです。単純に楽器使う量が多くなるほど、音量が上がります。実際のプレイヤーのことを考えても、皆が演奏しているのに、自分だけ演奏していない・・・という状況はあまりにも寂しいです。
ところで、筆者はシンバルの使い方をもっと工夫できたのでは、と反省しています。各小節の1拍目に置かれていて、すごくワンパターンな感じがして、変化が感じられず、飽きてしまいます。
<まとめと反省。これからのこと>
(偉そうに)独自のオーケストレーションの手法を説明してきました。ドレミだけで曲が書ける、オーケストラが書ける、と単純に言っても、オーケストラにアレンジする作業は労力と創意工夫が必要です。楽器の量が多いので。12色入りの色鉛筆よりも24色入りの色鉛筆の方が、選択肢は多いですが、その分、センスと職人の腕が必要になってきます。恐らく、それと同じです。
自分の作品を聴くと、「まぁ無難な曲だな」と感じます。曲としては成立しているけれども、なんか迫力が欠けているような気がします。先人達のオーケストラ作品やハリウッドの映画音楽には最初から観客を心を掴むような、とんでもないイントロがあります。それと比べるとこの作品はスケールがかなり小さいです。
さて、今までそのスケール内の音、つまり、ドレミファソラシドだけで解説してきましてた。これからはそれ以外の音、#や♭がついた音にも視野を広げて、解説していきたいと思います。例えば、「転調」や「セカンダリードミナント」、「モーダルインターチェンジ」などについて扱います。要するに、使える音やコードをもっと広げていく・・・ということです。
その前に「そもそも#や♭が増えたり、減ったりするということはどういう聴覚的効果があるのか?」について次回、解説したいと思います。
*少し、下調べ・資料集めに準備に時間をかけたいので、音楽理論以外のことも記事にする予定です。