セオリア・ハルモニア 〜はじめての人からすごい人のための音楽理論〜

初心者から上級者のための音楽理論ブログです。実践的な例を挙げながら、主観的に音楽理論をまとめたいと思います。

音程(Interval)② 〜音程の数え方〜

 前回では、音楽の世界では音と音の距離を「音程」ということ、そしてその音程の広さは個別のサウンドを持つということを学びました。

 今回は実際にどのように音程を数えるのか(頑張って)説明したいと思います。

 

 音程の単位は「度」であるということを前回述べました。

 音程は必ず

                 

 「◯X度」 

 

 という形で表されます。

 ◯には長・短・完全などが入り、Xには数字が入ります。では、まずXに入る数字の数え方を考えましょう。

 X = 楽譜に書かれている2音も含め、間にいくつ音(ドレミファソラシド)が入っているか   

 で表されます。

 

 少しわかりにくくなってしまいました。図で説明しましょう。

 

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まずは♯、♭などの記号を消す

 楽譜上にドとミの和音があります(白玉)。そのドとミの間にはレが挟まっています(黒玉)。楽譜に書かれている2音=ド+ミと、その間にレが入っているので、3つ合わせて合計3度です。

 要するに、スタート地点とゴール地点とその間の音を数えるんですね。

 この例題ではスタート地点=ド、ゴール地点がミで、スタートからゴールの間にレがありますから、ド+レ+ミで3度です。

 例えば、ドとソの音程であれば、スタート=ド、ゴール=ソ、間がレ+ミ+ファなので、ドレミファソで5度です。

 ファとレの音程はファ+ソ+ラ+シ+ド+レなので6度です。

 

 終わりです・・・

 

 注意していただきたいのが、数える(Xを決める)際にはシャープやフラットなどの記号は全部無視するということです。 

 全無視です。シャープだろうがフラットだろうが、ダブルシャープだろうが鼻くそがついていようが全無視です。

 上の例では色んな記号がついていますが、全部3度です。

「じゃあ、シャープやフラットなどの記号がついた時の区別がつかないじゃん!」

 ってなりますよね。そこで登場するのが前述の「◯」に入ることになる、「長」「短」「完全」「増」「減」です。

 これがまためんどくさいんですわ・・・

 

 これらを説明するためには最小単位の「半音」についてまず説明しなければなりません。

 最小単位とは物をもう分けられない!というところまで小さくした物です。例えば、物質の最小単位は素粒子で、情報量の最小単位はbitですね。

 音楽理論の中の最小単位、すなわち、一番小さい音程は「半音」です。

 その半音をさらに小さく分けようとする試みもありますが、それはまぁ置いといて・・・

 

 説明しましょう。

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ミとファ、シとドは半音(黒い鍵盤がない)

 ピアノの鍵盤で考えるとわかりやすいです。

 隣あっている白い鍵盤と黒い鍵盤の2つが半音です。

 ただし、例外的に、ミとファ、シとドは半音同士です。だから、ミとファ、シとドの間には黒い鍵盤がないんですね。

 この半音を2つかけ合わせると全音になります。

  

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 「◯X度」の「◯」を説明するために、この半音と全音を使っていくことになります。
 

 

完全1度 (Perfect 1)

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完全1度 全く同じ高さで、同じ音

 え〜〜〜・・・・・はい。

 ちなみにまったく同じ高さの、同じ音同士の和音またメロディーのことをニゾン(Unison)って言います。

 実際には「完全1度」より「ユニゾン」の方がよく使う言葉です。

 

2度系

短2度 (minor 2)

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半音=短2度

 画像の使い回しで申し訳ないのですが、短2度は半音と同じ音程と思って差し支えありません。

 

長2度 (major 2)

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全音≒長2度

 同じように、長2度は全音と一緒と解釈してもらってもかまいません。

 上で全音=半音×2 だと説明しました。全音≒長2度、半音≒短2度ですから、長2度のほうが短2度より半音1つ分広いです。

 

 ここで「長・短」の登場です。

 同じ2度でも、広いほうを「長」狭いほうを「短」として区別しているのです。

 

「じゃあ、さっきの完全は???」という疑問が出てきますが、もう少し先に進みましょう。

 

3度系

短3度 (minor 3)

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 短3度は半音3分で構成されています。一方、「広いほう」の長3度は・・・

 

長3度 (major 3)

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短3度より長3度の方が半音1つ分広い

 半音=h.nが4つ内包されています。

 短3度より半音が1つ多い分、長3度のほうが広い音程です。 

 ここでも、広いほうを「長」狭いほうを「短」としています。

 

4・5度系

完全4度 (perfect 4)

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半音5つ分(左)、全音2つ+半音1つ(中央)、長3度+半音(右)

 4度には「完全」を使うようです。

 この辺から内包されている半音の数が多くなってきたので、少し数え方を変えてみましょう。

  ①今まで同様、半音(h.n)で数えると5つの半音を内包している。(左)

  ②2つの全音(w.n)と1つの半音(真ん中)

  ③長3度(M3)と半音(右)

 

完全5度 (perfect 5) 

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 5度にも「完全」を使います。

 完全5度の広さになってくると、半音7つも含んでいます。7つとなると、少し数えるのが面倒くさくなってきます。 楽譜を作るのもめんどくさい.... 

 この例の中では、完全5度=長3度(M3)+短3度(m3) という数え方をしてみました。

 他にも、「完全4度+全音」という数え方もありますね。

  

増4度 (augmented 4) / 減5度 (diminished 5)

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 ここでついに「増」と「減」が出てきました。

 この増4度と減5度については、まず完全4度と完全5度の音程を理解してから、考えた方が頭に入りやすいです。

 なぜなら、上図の通り、増4度というのは完全4度が半音1つ分広くなった音程で、減5度は完全5度が半音1つ分狭くなった音程です。

 

 広くなると「増」狭くなると「減」と表現しています。

 

 「ん?これどこかで聞いたことありますね?」

 

 先程、「3度系」の中で「広いほうを「長」狭いほうを「短」と学びました。

 しかし、発想として同じですが、似て非なるものです。

  ややこしいことに、4、5度系には絶対に「長」と「短」をつけません。

  逆に、2、3度系、後に出てくる6、7度系には絶対に「完全」をつけません。

  では、「増」と「減」は2、3度系にはつけないのか?結論から先に言うとつけれます。
   この点については後で表でまとめますので、残りの6度と7度と8度を先に終わらせましょう。

 

6度系

短6度 (minor 6) / 長6度 (major 6)

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転回による考え方

 6度系には「長」「短」を使います。

 図の真ん中に示すように短6度=完全5度+半音、長6度=完全5度+全音と数えられます。ここでも広いほうは「長」、狭いほうは「短」使い、3度系の時と同じです。しかし、ここでは違う数え方を紹介しましょう。

 

  2つ音を上下入れかえると「長」と「短」、「増」と「減」が逆転します。(完全はそのまま)

  この和音の構成音の位置を入れかえることを「転回(Inversion)」と言います。

  一方、数字は9からその対象の和音の度数を引いてあげた数です。

 例えば、短6度の和音を上下逆さまにすると長3度になります。「短」は「長」になり、9-6から「3度」が導かれます。

 逆に、長6度の和音を上下逆さまにすると短3度になります。

 

 つまり、転回すると・・・

 <長←→短> or <増←→減>9-X度

 ということになります。

 これを利用して次の7度系を数えてみましょう。

 

7度系

短7度 (minor 7) / 長7度 (major 7)

 

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短=m, 長=M

 短7度を転回すると長2度(全音)になり、長7度を転回すると短2度(半音)になります。ここでも、「長」と「短」が互いに変換されており、2つの度数を足すときちんと9になります。

 なので、7度系くらいの広さになると、慣れるまでは転回の考え方を使ったほうが早い気がします。

 私が中学生の頃は「半音をひっくりかえすと長7、全音ひっくりかえすと短7」という覚え方をしていました。

 ちなみに初めてコード覚える人は「min7」と「maj7」を混同しやすいので、ここはしっかりと理解していただきたいです。

 

完全8度

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要するにオクターブユニゾン

 8度には「完全」を使います。 

 前回の記事で少し扱ったように、高さが違が、同じ音で演奏されるメロディー、和音のことを「オクターブユニゾン(Octave Unison)」と言います。

 完全8度はちょうど1クターブ離れているユニゾンのことです。

 

まとめ

 音程は「◯X度」と表されます。◯には長、短、増、減、完全などが入り、Xにはシャープ、フラットなどの記号を除いて、2音間に内包される音の数が入ります。

 そして、音程の広さを「長・短」「増・減」で表します。それを図にまとめると下図のようになります。

 

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「短」が狭くなると「減」、「重減」となり、長が広くなると「増」「重増と」なっていく

 この表を見ると基準から広くなるほど長<増<重増という名称がつき、狭くなるほど短<減<重減という名称つきます。重増と重減という言葉は初めて出てきましたが、増と減がさらに広くなったり、狭くなったりしたものです。しかし、これはあくまで理論上の考え方であり、現実では無意味なもののように思えます。

 そして、2度、3度、6度、7度には「完全」がつくことがなく、逆に1度、4度、5度、8度には「長」「短」がつくことがありません。これは歴史的な背景が理由にあります。これについては、和声学や対位法を取り扱う時に詳しく述べたいと思います。

 

 次回の記事では、実際に先人達がどのように音程を駆使したのか具体例を挙げながら紹介し、音大の入試や中高のテストで出題されるような問題を実際に解きながら、一緒に音程を復習していきましょう。