セオリア・ハルモニア 〜はじめての人からすごい人のための音楽理論〜

初心者から上級者のための音楽理論ブログです。実践的な例を挙げながら、主観的に音楽理論をまとめたいと思います。

コードとスケール編③<古典派作曲家からコードを学ぶ 〜#と♭の数が変わる理由>

 今回はベートーベンの三大ピアノソナタの一つ、「悲愴 第1楽章」の冒頭を取り上げます。

*sequenced

 めっちゃ暗い曲ですね。

 この曲はハ短調(C minor Scale)です。

 

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ハ短調(C minor Scale)はb3つ

 ところで、なんで調(key)によって#やbの数が変わるのでしょうか?

 

<なんで#とbの数が変わるんや?> 

  下図は#とbのない、ハ長調(ドレミファソラシド)の音階です。

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w.t=全音、h.t=半音

 各音の音程を見ると、全音全音ー半音ー全音全音全音ー半音、となっております。長調(メジャースケール)の各音の音程はこの並びになっており、この順序は変わりません。

 

 ということで、こんなものを作ってみました。

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  メジャースケールものさし〜〜〜!!!

  

 前述した、「全音全音ー半音ー全音全音全音ー半音」の音程をメモリで表現してみました。これをハ長調(Cメジャースケール)にあててみます。

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ピアノの鍵盤の配置を表現してみた

 白文字はピアノの白鍵、黒文字はピアノの黒鍵で表記し、ピアノの鍵盤配置を表現してみました。そこにハ長調の音階にぴったり合うよう、ものさしをあてます。(赤のメモリはその調の一番目の音です。)

 「全音全音ー半音ー全音全音全音ー半音」の順序は変わりませんから、このものさしをそのまま左右へシフトすれば、なぜ#と♭の数が変わるのか、わかるはずでは?

 試しに、ニ長調(Dメジャースケール)へものさしを動かしてみましょう。一番目の音、レ(D)に赤メモリを合わせてみます。

 

 こんな感じになりました!

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ニ長調(D major Scale)

 F#/Gb(ファ#/ソ♭)とC#/Db(ド♯/レ♭)にメモリが合わさっています!

 ではファに#をつけるのか、ソに♭をつけるのか、またドに#をつけるか、レに♭をつけるか、どちらなのでしょうか?

 

 スケールというのは音階(音の階段)ですから、このようなとりあえず、下のような形にしなければなりません。

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ニ長調(D major Scale)=ニ(レ)の音階なので、レが一番目

 これにファとドに#をつけると綺麗な形になります。

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ニ長調(D major Scale)

  例えば、ソとレに♭をつけるといびつな形になります。

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見た目的に「音の階段」ではない

 上の正しい図はきちんと「全音全音ー半音ー全音全音全音ー半音」の順序になっておりますが、下の図では増1度なんか出てきて、不自然な感覚があります。
 #をつけた上の方が、なんとなくきれいという感じはありますよね。下の方は、記号が多く、読みにくいです・・・

 どちらの図も音そのものに関して言えば、間違いではないのですが、譜面表記上では見た目の美しさも大事です。

 

 それでは、次は短調を見ていきましょう。

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イ短調(A Minor Scale)

 Cメジャースケールと同じように、♭も#もない短調イ短調(A minor scale)です。 

 短調では(基本的に)「全音ー半音ー全音全音ー半音ー全音全音」の音程の順序です。 これもこの順序は絶対です。

 

 ということで、短調にも、ものさしを作ってみました。

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  では、この赤いメモリをド(C)まで動かしてみましょう。

 

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 ドを一番目の音とする短調の音階(マイナースケール)ではD#/Eb, G#/Ab, A#/Bbを含むようです。

 これはEb, Ab, Bb(ミ、ラ、シにb)が正解です。

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ハ短調(C Minor Scale)

 きちんと、「全音ー半音ー全音全音ー半音ー全音全音」の順序になっています。

  

 これらのものさしをスライドしていって、全てのスケールの#♭の数をまとめたものが下図です。

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覚えようね

 

 しかし、短調(マイナースケール)だけ種類が3つあるんです。

 

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①自然的短音階(Natural Minor Scale)

 これがマイナースケールの元のなる基本の形です。

和声的短音階(Harmonic Minor Scale)

 長調、メジャースケールでは7番目と8番目(1番目と同じ音)の音が半音関係にありました。

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 短調ではこれがなかったので、無理やり?7番目の音(シb)を半音あげます。
 こうして出来上がったのが和声的短音階です。

旋律的短音階(Melodic Minor Scale)

 しかし、これだと6番目の音(ラb)と7番目の音(シ)が増2度関係になってしまって音階(音の階段)っぽくありません。

 *音楽では増音程は嫌う傾向にあります。

 そこで6番目の音も半音あげ、長2度音階にしてきれいな音階にして出来上がったのが旋律的短音階です。
  

 というわけで、そこから生まれる和音(コード)も違います。

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 新しく学ぶコードが出てきました。m(maj7), maj7(aug), dim7です。順にみていきましょう。

<Minor major 7th>

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 呼び方:マイナーメジャーセブンス

 マイナートライアドに長7度(Major 7th)の音が乗っかった形です。

<増3和音(Augmented Triad)>

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呼び方:オーギュメントトライアド

 全ての音程が長3度(major 3rd)の和音です。ルートと5thの音が増音程になっています。

 これに長7度(major 7th)の音が積み重なったコードがmajor 7th(aug)です。

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 「aug」はカッコで閉じて、(aug)と表記します。

<減7の和音(Diminished 7th)>

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呼び方:ディミニッシュセブン

 

 全ての音程が短3度(minor 4rd)です。ルートと7thが減7度関係から「減7の和音」と呼ばれます。

 

 ちょっと長くなったので、本格的に曲を取り上げるのは次回にしましょう。チョットツカレタ・・・