セオリア・ハルモニア 〜はじめての人からすごい人のための音楽理論〜

初心者から上級者のための音楽理論ブログです。実践的な例を挙げながら、主観的に音楽理論をまとめたいと思います。

音程<Interval>④ 〜音程 1問1答! オーケストラスコアもちょこっと読んでみる〜

  大学受験で1問1答形式の社会の問題集を使った方、多いと思います。今回は音程をその1問1答形式で解きながら、確認・復習したいと思います。その前に少し前回までの記事で扱ったことを復習しましょう。

 

・ある2音間の距離を「音程(Interval)」という

・音程は「◯X度」で表される

・Xに入る数字は#、♭などの記号を除き、ドレミファソラシドの数が入る

・◯には、3、6、7度系なら「長」「短」1、4、5、8度系なら「完全」「増」「減」が入る

・半音の加減で重減<減<完全<増<重増、重減<減<短<長<増<重増の順番で広さが変わる(下の図1参照)

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図1 半音の加減による音程の変化一覧

 ここで、音程の「広くなる」・「狭くなる」とは何なのか。ここでしっかりと確認したいと思います。

 #は「半音上がる」ことを示す記号ですから、#がつけられた音は(楽譜上で言う)上に向かって伸びていきます。逆に♭は「半音下げろ」を意味しますから、下に向かって伸びていきます。

 つまり、音程の「広い・狭い」についてはこの上下の縦方向しか言及せず、横は一切、考慮しないということです。ですから、ここで言う「広くなる・狭くなる」は「面積が変わる」と言うのと少し違います。

 そこで注意してもらいたい点が一つあります。#は上に向かって伸び、♭は下に向かって伸びるということは、それらが上の音につくか、下の音につくかで、音程の広さが変わると言う点です。(図2)

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図2 #は上へ向かって、♭は下に向かって伸びる

 

 例えば、#は上に向かって伸びる性質なので、上の音につくと音程を広くさせます。逆に、下の音につくと上の音に向かってしまいますから、逆に狭くなります。

 これを理解していないと「増」になるのか、「減」になるのかの判断ができないので、この概念は頭にしっかり入れていただきたいと思います。

 

それではこれらをふまえて、問題です。
問題の下にすぐ解説が載っているので、スクロールしながらご覧ください。 

 

用語・・・「半音」=h.n

     「全音」=w.n

                  「長」=M

     「短」=m

                  「完全」=P

                  「増」=Aug 

      「減」=Dim 

     「重増」=D.Aug

     「重減」=D.Dim

 

 

 <基礎編>

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A.短3度

 #を無視すると、ファ、ソ、ラで3度が確定です。あとは短か長のどちらかですが、半音を3つ含んでいるので、短3度です。

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A.長2度

 ♭を除くとラ、シで2度です。半音2つ分は全音、長2度です。

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A.完全5度

 ミファソラシ・・・で5度です。5度の場合、まず「完全」か「増」、「減」が考えられます。全音3つ分と半音1つで「完全」に確定です。長3度・短3度の組み合わせから「完全」を導けます。

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A.短6度

 6度系は「長」か「短」が第一候補。展開すると長3度になりますから「短」がつく。

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A.完全4度

 #を無視すれば、ソラシドで4度です。4度も「完全」か「増」、「減」が考えられます。全音2つと半音1つを含んでいますから完全4度です。

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A.長3度

 3度系かつ半音4つ分なので、長3度です。

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A.増4度

 完全4度より半音1つ分広くなっているので、増4度。

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A.短7度

 展開すると長2度になるので、短7度。

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A.長6度

 展開すると短3度になるので、これは長6度。

 

 <中級編>

 

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A.長13度 

 このような形は初めて出てきました。1オクターブを超える形でも基本は変わりません。

 いつも通り、ドレミ・・・の数を数えます。一方、「長」、「短」などは何が入るかと言うと、まずどちらかの音が狭くなるよう、1オクターブ上げ下げします。その音程で判断します。

 上図の例から、ファから13度上のレを1オクターブ下げると、長6度になるのがわかると思います。この「13度」と「長」をくっつけてあげるだけです。

 

Tips

  「このように1オクターブより大きく離れた音程を複音程(Compound Interval)と言います。一方、1オクターブ以内の音程を単音程(Simple Interval)と言います。

 しかし、1オクターブを複音程に含めるか、含めないかは著書によって異なります。」

 

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 A.重増5度

 このxのような形はダブルシャープと言い♯2つ分を表す記号です。とりあえず5度音程ですから、完全系のグループに入ることがわかります。 

 ここで冒頭の図1をもう一度ご覧いただきたい。解説のように、上の音に#がついているので音程はどんどん広くなることがわかります。「完全」系の音程は広くなるほど、完全<増<重増と変化します。さらに。もし、このダブルシャープがなければ、11番の問題は完全5度です。#1つで増、ダブルシャープ=#2つで重増と変化するので、答えは重増5度。

*Dは「重」を意味するDoubleを表す

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A.増3度

 うえ〜〜〜。いっぱいついてる・・・。とりあえず、ややこしそうなダブルシャープxは外してから考えましょう。

 xを外すと短3度ですね。3度系は短<長<増と広くなります。まず、#を一つ加えると長。次にxになるべく、もう一つ#を加えると、またさらに広くなるので、答えは増3度。

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A.増2度

 #を無視すれば長2度です。半音が1つ分広くなっているので答えは増2度。

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 A.重増4度

 ♭を除くと一見、増4度ですが、♭が下の音について半音1つ分広くなっているので重増4度。

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 A.重減5度

 ♭♭をダブルフラットと言い、♭2つ分を意味します。xと違ってシンプルです。

 ミ 、シの音程は完全5度です。上の音に♭が1つつくと、音程が狭くなり、まず「減」。2つ目の♭がついてさらに狭くなるので、答えは重減5度。

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A.減7度

 短7度である和音が下の音に#がつくことで半音1つ分狭くなります。答えは減7度。

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A.増6度

 #を一旦無視すると長6度です。上の音に#がつくので音程は半音1つ分広くなります。ということで増6度。

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A.減6度

 xを除くと長6度です。xが下の音に見られるので半音2つ分狭くなります。長>短>減と狭くなるので、答えは減6度。

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A.減3度

 短3度が半音1つ分狭くなっているので、答えは減3度。

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A.重減4度

 ♭♭を無視して、そのまま読むと完全4度です。上の音につくことで半音2つ分狭くなりますから、完全>減>重減と変化して、重減4度です。

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A.増7度

 長7度が#1つ分広くなっていますから、答えは増7度。

 

<上級編>

 次の楽譜はブラームス交響曲4番第1楽章のコーダからの引用です。次のスコアを実音で読んだ時、線や括弧で結ばれている①〜⑤の音程を答えてください。

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Brahms, Symphony No.4 1st mov.

 

答えと解説

 難しくなると、このような出題形式になります。これは音程だけ問いているだけでなく、「オーケストラのスコアが正確に読めますか?」「ト音記号ヘ音記号以外の音部記号も読めますか?」という出題者からのメッセージです。

 「実音で読んだ時」と書かれていますから、楽器によってはそのまま音符を読んではいけません。移調楽器に注意してください。

① A.短10度

 Vl.1は1stヴァイオリンですね。ヴァイオリンは移調楽器ではないのでそのまま読みます。これは複音程の問題です。

 

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問題①

② A.完全5度

 Vc.はチェロ、Kbはコントラバスです。ブラームスはドイツ出身なので、Contrabass(英)と書かず、Kontrabass(独)と表記します。

 どちらも移調楽器ではありませんが、注意が必要です。コントラバスは実音より1オクターブ高く表記されているので、実際は

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となります。

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コントラバスと表記(written)と実音(concert)

 それから!チェロのファには#がついてますよ!

 楽譜を読むときは一番左から読んで、#や♭が何個ついているか確認しましょう。

③ A.長2度

 Vl.Ⅱは2ndヴァイオリン、Va.はヴィオラです。(Vla.とも書きます)

 ヴィオラト音記号を使わず、ハ音記号を使います。ハ音記号は初めて出てきましたね。

 

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左からト音記号、アルト記号、テノール記号、ソプラノ記号

 ハ音記号は歴史が古く、バッハのコラールなどに多く見られます。配置される場所によってまた名称が変ります。

 面倒くさいですが、音楽の歴史は古く、音楽にも都合があるので仕方ないですね・・・
 「3」のような形していますが、図のように出っ張っているところと楽譜の線が交わっている高さが真ん中のドになります。上の図は全部同じ高さのドです。

 さて、問題の解説に戻りますが、ヴィオラはこのアルト記号を使います。なので、わかりやすくト音記号に直すと

  

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 のようになります。なので答えは長2度。

 

 音大入試にはハ音記号があたりまえのように出題されますね。どのようなハ音記号が出ても、読み方さえ知っていれば解けるので、落ち着いて回答しましょう。

 

④ A.完全8度

 Hrn.はホルンです。ですが末尾に(C)と書かれているものと(E)と書かれているものがあります。これは移調楽器の種類を表します。要するに「ドを吹いて」と言われたら鳴る音を表しているので。例えば、(E)ならば、ドを吹くとE(ミ)の音が出てきます。

 こいつがちょっと曲者です。Hrn.(C)はそのまま読んで良いのですが、Hrn.(E)は楽譜上の表記より短6度下の音が実際の音です。

 

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ホルン(E)の楽譜上表記と実音

 理屈は簡単です。ドと楽譜に書かれていれば下のミが出てくるのですから、音程で言えば短6度下に下げれば良いわけです。つまり、Hrn.(C)とあわせて、実音に直すとこうなります。

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 ということで答えは完全8度。

 

Tips 

「と言っても、上の音が出るか、下の音が出るかわかりませんよね。大体の楽器は楽譜上の表記より下の音が出ます。しかし、上の音が出る楽器もありますから、結局は知らない楽器は調べるしかありません。移調楽器については『ジャズアレンジ編』で取り上げます。」

 

⑤ A.完全5度。

 Fl.はフルート、Ob.はオーボエです。これらの楽器は移調楽器ではないので楽譜の通り、そのまま読むだけです。なんのひねりもありません。答えは完全5度。

 

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 問題は以上です。参考に実音で表記されたスコアを下に貼ります。 

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実音で表記されたスコア


Tips 

 「大編成のスコアはセクション、音域によって並べられます。まず、一番上はフルートやオーボエなどの木管楽器(Woodwinds)セクション(Klar.はクラリネット、Fg.はファゴットです)、続いて真ん中が金管(Brass)セクション、一番下が弦楽器(Strings)セクションです。(ピアノやハープ、ティンパニーなどのパーカッション系の楽器は金管セクションとストリングスセクションの間に配置されます。)

 各楽器はセクションの中で高い音域から上に配置されます。」

 

まとめ

 お疲れ様でした。音程の問題はいくらでも問題のヴァリエーションが考えられるのですが、基礎知識があれば回答することができますので、ここでしっかりと押さえておきたいところです。

 上級編ではスコアからの出題でしたが、音程を理解していないとスコアが読めないということになってしまいます。オーケストラスコアでは実音に表記されたものはまず、ありません。そもそも見たことがない・・・。

 実音で表記された楽譜の方が読むだけならわかりやすいのですが、移調されたスコアのメリットはリハーサルでその楽器の演奏者との会話がスムーズに行われる点です。

 指揮者が「その〜小節目のドは〜」と言うと、演奏者が「それ、実音のドか俺達のドかどっち!?」という混乱を生じないためにあります。

 一方、ジャズの世界では実音と移調されたスコア、両方が混在します。私はピアニストなので普段、作編曲する時はパソコンに実音で表記させます。スコアを印刷する時も実音表記のスコアで印刷します。リハーサルをする時、移調楽器の演奏者と話す時は、頭の中で移調してその演奏者と相談したりします。(楽譜ソフトは実音表記と移調表記をクリック一つで変えれるので便利ですね・・・)オーケストラの楽譜を作る時は自分の勉強のためにも移調表記で楽譜を見ています。楽器によってはとんでも音程で表記される時があるので。(ホルンなどの音域が広い楽器)

 個人的な話が続きましたが、音程の概念がわからないとまずスコアが読めないと弊害が出てきます。まず音程を理解することは音楽をより理解するためには大切な一歩なんですね。

 

 次回で音程編の最後になります。次回は音程をより早く導き出すための、私が行なっていた練習方法を紹介し、その次からは音階(Scale)とコード(Chord)について書いていきたいと思います。