セオリア・ハルモニア 〜はじめての人からすごい人のための音楽理論〜

初心者から上級者のための音楽理論ブログです。実践的な例を挙げながら、主観的に音楽理論をまとめたいと思います。

音程<Interval>最終回/絶対音感マンvs相対音感マン 〜非常に生意気なんですけど・・・〜

 私が過去にしていた音程の練習方法を紹介します。

 

 今回で音程編最終回です。これまでの記事をきっかけに、音程について基礎を理解していただけた、また新しいことが発見していただければ非常に嬉しいです。しかし、さらに音程を理解するというか、実用的なものにするためにはもう一歩踏み込んだ作業が必要です。

 

 それは”暗記する”という作業です。 

 

 読者の中には小学校で100マス計算を習慣的にやっていた方、いると思います。筆者が小学生の時は100マス計算の参考書が流行していた時期でした。

 この100マス計算、1ケタの足し算で構成された簡単ものですが、(個人に差はあれど)どうしてあんなに速く解けたのでしょうか?

 それは式と答えの組み合わせをある程度、覚えているという他にありません。頭で覚えているというよりは”体で覚えている”、と言うべきでしょうか。九九のかけ算も同じです。九九なんか指で数えていたら、計算どころじゃありません。

 

 これまでに紹介した、半音で音程で数えていく、という作業は算数で言えば指で計算するのと同じようなものです。しかし、それだと遅いのです。

 三田紀房さんのマンガ、「ドラゴン桜」の中で「算数や数学が苦手なのは・・・それは計算が遅いから。」と解説されています。

 音楽にもこれと同じことが言えます。音程を数える作業が遅いと、音楽を学ぶ作業も自然と遅くなり、学習も少し嫌になります。

 私もオーケストラスコアを分析する時は、多様な移調楽器の読譜に慣れていないので(特にハ音記号やF菅の楽譜)いまだ四苦八苦しています。

 

 重減や重増などは少し頭の中で考える作業が必要でも、長や短、完全などのシンプルな音程は楽譜をパッと見て、すぐ答えが出るような反射神経は欲しいものです。

 勉強に暗記はどんな分野でも必ず必要になってきます。(残念ながら?)それは音楽でも同じです。しかし、幸いなことに私達には楽器があります。すなわち、”体で覚える”という作業が可能です。

 

 それが今回の記事を書く理由です。簡単な音程ならすぐ答えられるほど、体で覚えて欲しい、というのが今日の趣旨です。

 

練習方法

・ゆっくりから(♩=70~)

・ある音が始めて、半音ずつ上がっていく(下がっていく)

・上行形・下行系どちらも

・どの音からでも始めれるように

・耳で聴きながら、目で見ながら(ピアニストは鍵盤も見ながら)覚える

 

*音域がある人は適度に調節してください

 

 

半音・全音

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  半音、全音で構成された音階を半音階、全音階(Whole Tone Scale)といいます。半音階は多くの教則本に載っているので、得意な方は多いのではないでしょうか。

 

短3度 

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4つの音のグループごとに同じ音に帰ってくる

 すべて短3度で構成されています。これはディミニッシュコードと同じですから、それも覚えられて一石二鳥ですね。4つの音のグループごとに同じに音に帰ってくる点に注目。

 

長3度

 

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今度は3つ毎に

 それぞれの音程が長3度。これはオーギュメントコードですね。今度は3つの音ごとに同じ音へたどり着いていますよ。

 

完全4度

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増4度・減5度

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 これは1オクターブを半分に割ったような形ですね。

 

完全5度

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 以上です。6度系と7度系はありません。これらを練習すれば十分です。

 

音程編おわりに

 音程を理解することは音楽を分析、学習する以外にも様々なメリットがあります。例えば・・・

 ・相対音感がつく

 ・(それによって)移調がより速くできる

 ・理論学習の基礎になる   etc...

 

 ところで「絶対」、「相対」とは何でしょうか?絶対零度、絶対的、相対関係・・・などと言いますね。

 わかりやすく言えば、絶対=1つ、相対=2つ以上、と意味します。例を挙げると、y=ax+bのグラフ。xの値によってyの値が変わります。相対的ですね。他にアインシュタイン相対性理論。時間の長さは一定(1つ=絶対)だと思われてきましたが、光の速さに近づくほど時間はゆっくり進む(2つ以上=相対)。これも相対的ですね。

 絶対音感とはある音1つだけ(基準音なしで)でどの音かわかる能力。対して、相対音感は連続する、2つ以上の音があれば(基準音ありで)、どの音がわかる能力です。(もしかしたら経験者も含めて)多くの方が「絶対音感とは全ての音がドレミに聞こえる能力」と誤解しているかもしれませんが、それは違います。絶対音感とはあくまで「ヒント(基準音)なしでドレミを判定する能力」です。

 例えば、ある人がソ〜と鳴らします。絶対音感マンは一発でそれが「ソ」とわかります。相対音感マンはまだ「?」となります。しかし、「これはドですよ」と教えてからド〜と鳴らします。「じゃあこれは?」と言ってソ〜鳴らすと、相対音感マンは「それはソ」と当てることができます。要は、誤解を恐れずに言うと、ヒントなしで当てれる方が絶対音感、ヒントありで答えられるのが相対音感です。

 この違いは一体何なのでしょうか?恐らく、相対音感保持者は音程の距離を感覚的、聴覚的に覚えているのだと思います。つまり、「音程ものさし」のようなものを頭に持っていると例えられるかもしれません。

 筆者は絶対音感マンですが、なぜか日本語の歌を聴く時だけ絶対音感が発動しません。理由はわかりません。人体の不思議です。

 なのでJ-Popを耳コピする時は少し苦労します。その歌を口すさんでみて、音と音どうしの距離感(音程)を考えて楽譜におこします。「どのくらい(何度)上がったか、下がったか」を耳で感じながら、コピーするわけです。筆者は相対音感マンではないので少し苦労します。

 しかし、歌ものを何曲かコピーしているうちに相対音感がついてきました。相対音感は何歳からでも身に付けることができる、と実感したと同時に以前より移調が速くできるようになった、と感じました。

 

 なんかあるフレーズをどの音からでも直感的に弾けるんですよ。さぐりさぐりですけど・・・

 

 移調するのが速いということはかなりの大きなメリットです。

 ボーカリストから重宝されますし、ジャズの練習の際にも役立ちます。

 

 やはり、音程というのは音感力に密接に関わっていますから、ただの理論の勉強と言えど、あなどれません。

 

 さて、次回からスケール、コード編について取り上げたいと思います。ちょっと違ったアプローチでこれらを説明しようと思っているので、少し勉強の時間が必要です。参考音源もできるだけ作りたいと思っています。それでは、また次回。